浮世絵 源氏物語 
 
    

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寛文版源氏物語05 若紫 1(わかむらさき)
 物語 全54帖  絵師: 作者:紫式部   出版:寛文年間(1661~1672) 版元: 

若紫  1  2

05若紫 源氏18歳

 手に摘みて いつしかも見む 紫の ねにかよひける 野辺の若草

 源氏は瘧病(わらわやみ=周期的に発作などが起こるマラリアに似た熱病)にかかり、三月の末に北山の聖(ひじり)に加持(かじ=密教の祈祷の法)を受けに赴く。加持の合間に僧庵のあたりを散策していると高名な僧都(そうず=僧正に次いで僧尼を統括する位)の住む僧坊に女の姿を見る。
 加持の効果であるのか源氏は発作も起こらず、供の者が源氏に京に帰るのを勧めたが、大徳(高僧)が「身にとりついている怪もあるようなので今宵は静かに加持を続けて、それから帰るように」と言う。源氏はこのような旅寝の経験がないことから興味をそそられて「さらば暁に」と言って同意する。
 源氏は加持の後の時間を持て余して、霞が立ち込めた夕暮れに惟光(これみつ・源氏の家臣)を供として高名な僧都の僧坊の辺りを散策する。源氏と惟光が僧坊を覗くと40歳ほどの尼君と見るからに可愛らしい10歳ばかりの女子(をんなご)が目に入った。そこにこの僧坊に住む僧都が現れて源氏が聖の加持を受けるために来訪していることを告げ、見舞いに参上するとの話しが聞こえたので源氏と惟光は聖の僧坊に戻った。
 源氏のもとに僧都が参上し、涼しき水の流れの景色がある庭を御覧に入れたいと僧都の僧坊に案内する。源氏は先ほど覗き見た尼君と女子の顔立ちに想うことがあり僧都の僧坊に行く。源氏は僧都に尼君と女子の素性を訪ねると、尼君は僧都の妹で、亡くなった按察使大納言(あぜちのだいなごん)の妻であったこと。尼君と按察使大納言の間には娘がいたが、その娘はすでに亡くなっているが娘と兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや・藤壺の兄)との間に生まれたのが女子であることを話す。尼君はこのごろ病弱となりこの坊に籠もっているという。源氏は女子が藤壺女御の姪(若紫、後の紫の上)であることを知り、僧都と尼君に妻として迎い入れることを前提に女子の世話役を申し出る。僧都と尼君はまだ年少であることを理由に源氏の申し出を拒む。
 加持を終えた源氏は僧都と尼君の見送りを受けて京に戻る。源氏は内裏に参上して帝にこの数日の出来事を話す。そこに左大臣が参り、しばらく休息にと左大臣の邸に源氏を誘う。源氏は邸で待つ葵の上と会うが、葵の上の何時もの高貴な振舞に和めず、北山で会った女子(若紫)のことを想い出していた。源氏は北山に頻繁に文を通わせる。
 そのころ、藤壺の宮が病で宮中を退出して里に下っていた。源氏は思い悩むも策を謀って藤壺の宮との逢瀬を持つが、夢とも現とも覚えぬ様であった。しばらくして藤壺の宮は懐妊したことを知り、この罪におののき恐れた。源氏は不思議な夢を見て、夢の占いさせる。占いの者は「行き違いがあって謹慎なさればなるぬことがある」と予言する。源氏は藤壺の懐妊の話を伝え聞き、夢はこのことであったのかと予言が的中するかもしれぬと思い悩む。源氏は何度も藤壺の宮に文を遣わすが、返事は一切なかった。
 7月になって藤壺の宮は参内する(4か月ぶりの参内。源氏との密会は4月)。藤壺の宮の少しふっくらとした体つき(帝は後胤を宿したと思っている?)とやつれ顔は、それはそれで美しい。帝はしみじみと藤壺の宮を愛おしく思い、寵愛の深さは一層増す。帝は藤壺の宮の部屋ばかりに通い、秋の気候の良い時期でもあり源氏も召して一日中琴や笛などを楽しむ。源氏はひたすら隠そうとするが気色の漏れることは忍び難き、また藤壺の宮も忘れ難きことをあれこれ思い続けていた。
 北山の僧都の僧坊にいた尼君は、体調がいくらか良くなったので京に戻っていた。このごろの源氏は何となく心細くて嘆いていたが、9月の月の美しい夜にようやく忍んで通うところに行く気になる。内裏から六条京極あたりへ行く途中、庭の木立が鬱蒼と茂って荒れた家を目にする。供の惟光がこの家は北山の尼君の亡くなった夫である按察使大納言の家であり、北山からこの家に移っていた尼君は最近ひどく弱っていると伝える。源氏は直ぐにも尼君を見舞うことを惟光に命ずる。突然の源氏の見舞いに先方は慌てるが、死期を悟った尼君は直接会うことを避け取次の女房を介して見舞いの礼を述べ、源氏が女子(若紫)を引き取るとの申し出に心変わりがないのであれば託したい旨を述べる。
 源氏は翌日も尼君を見舞うが、尼君は今日一日持ちこたえられるか分からない身で、これから北山の僧都の僧坊に移るという。秋の夕暮れは何時も物悲しい。
 源氏は10月になって、9月の20日ころに尼君が亡くなったことを知る。父宮(若紫の父・兵部卿宮)は故按察使大納言の家を訪れ、この様な荒れた家に若紫を住まわせるのは不憫だとして若紫を自身の邸に引き取ると若紫の世話をする少納言の乳母に伝える。少納言の乳母は亡くなられた尼君から娘が父宮の邸で辛い思いをした話しを聞いているので困惑する。源氏の指図を受けた惟光が若紫の様子を伺いに訪れ、父宮が若紫を明日にも父宮の邸に移す考えであることを知る。惟光は左大臣の邸にいた源氏にこのことを伝える。源氏は世間の批判を受けることになると思案するも、この機を逃すとこの先も若紫を二条院に迎えることはできないと思い、その日の夜更けに故按察使大納言の家を訪れて若紫を連れ出す。少納言の乳母もこれに従った。
 源氏は二条院の平常は使っていない西の対に若紫を住まわせる。故按察使大納言の家に残った女御や遊び相手の童もだんだんと西の対に集まってきた。若紫はもともと父宮とは離れて暮らしていたので、尼君が亡くなったことを除けば寂しさを感じることもなく、何の屈託もなく新しい暮らしに慣れてゆく。 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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