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源氏物語が書かれたのは平安時代中期、西暦1000年ごろとされる。作者は紫式部という女房名を持つ女性。日本で最初に書かれた物語は竹取物語とされるが、しかし竹取物語は語り継がれた伝承を文章にしたもの。源氏物語は不完全な形態ではあっても個人の思考・情感を取り入れた日本最初の小説といえる。とはいえ、現在に伝えられる源氏物語は本当に紫式部が書いたものかどうかは不明な点もあるらしい。なにより作者の自筆の草稿は何も残っていない。当時に印刷技術はなく、全て写本によって受け継がれるのだが、平安時代に書き写された本は残っていない。現在に伝えられる源氏物語の内容は鎌倉時代後半には定まっていたようであるが、これが最初に書かれたものと同じものかどうかは検証のしようが無い。 現代における機械的コピーによる作業でも編集に間違いが起こりえる状況である。まして54帖という長編の物語を人の手で書き写すときに間違いがないと考える方が不自然である。書き写す者が意図的に、自己に都合よく改ざんすることも大いにあり得る。更には紫式部が作者であるということも、他の文献の状況証拠を集めて推測したに過ぎない。
それにしても源氏物語が書かれて200年後には「源氏釈」という解説書が書かれ、以後現在に至るまで数多くの解説書・研究書が出されている。現代文に翻訳された物語の概要だけを読めば、私には性的描写のないエロ小説とも思えるのだが、何故これほどまでに長く、それも社会的に地位の高い人の間で読み継がれてきたのか不思議な気もする。西鶴の好色一代男も柳亭種彦の偽紫田舎源氏も源氏物語からヒントを得て書かれたものだ。源氏物語は男社会の男を主人公とした小説であると思えるのだが、本当に女性の手による物語なのだろうか。いや、女性だからこそこうした物語を執筆することが可能であったのかもしれない。いずれにせよ、当時の貴族社会の風俗・風習そして言葉使いを理解していないとこの物語を読み解くことは難しそうだ。
江戸時代に出版された源氏物語あるいはその解説書には絵入のものも多くある。しかしその読者は絵入本であることを必ずしも購入の条件としてはいなかったようで、絵そのものはそれほど魅力あるものはなく、浮世絵という視点で見れば少々不満である。江戸時代の主たる読者層は和歌や俳諧を趣味とする人たちと思われるが、そうした人達は絵入であることで自らのプライドが損なわれると思っていたのかもしれない。それでも54帖の長い文章を読むことは相当の苦労であったようで、その人達のためにダイジェスト版の源氏物語も出版されている。一枚物の浮世絵になった源氏物語も結構あるが、それらは今様に描かれたものがほとんどで、なにより54帖という長編小説に合わせて浮世絵も長編シリーズを出版すことを主たる目的として源氏物語を題材に選んだといった意図が感じられる作品もある。もっとも、そうした商業主義こそが浮世絵の活力の源泉ともいえる。 |
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おさな源氏
絵:
作:野々口立圃 |
出版年 寛文10年(1670) 版元:八尾勘兵衛
源氏物語のダイジェスト版および解説書。 |
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源氏小鏡
絵:菱川師宣
作: |
出版年 延宝3年(1675) 版元:鶴屋喜右衛門
源氏物語のダイジェスト版および解説書 |
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好色一代男
絵・作:井原西鶴
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出版年 天和2年(1682)
主人公”世之介”の7歳〜60歳までの生涯を源氏物語54帖にならって54章 で構成。 |
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源氏大和絵鑑
絵:菱川師宣
作: |
出版年 貞享2年(1685) 版元:鱗形屋
各帖につき一枚の絵入りで紹介。 |
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紅白源氏物語
絵:奥村政信
作: |
絵 奥村政信 出版年 宝永6年(1709)
源氏物語のダイジェスト版および解説書 |
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源氏
絵:
作: |
出版年 江戸中期 版元:村田次郎兵衛
青本 6巻。各帖を絵入りで紹介して、代表的な和歌を挿入。 |
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今源氏空船
絵:
作:西沢一風 |
出版年 正徳6年(1716) 版元 菊屋長兵衛
源氏物語を当時の町人生活に移し替えたパロディ小説。 |
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雛鶴源氏物語
絵:奥村政信
作:梅翁 |
出版年 享保6年(1721) 版元 山口屋権兵衛
源氏物語のダイジェスト版および解説書。 |
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藤の縁
絵:長谷川光信
作:方舟子 |
出版年 寛延4年(1751) 版元 菱屋治兵衛 |
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雅俗画源氏
絵:北尾重政
作: |
絵 北尾重政
出版年 天明8年(1788) |
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偐紫田舎源氏
絵:歌川国貞
作:柳亭種彦 |
出版年 文政12年(1829)〜天保13年(1842) |
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浮世絵 源氏五十四帖
絵:歌川広重
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出版年 嘉永5年(1852)
源氏五十四帖のうち「桐壺」「帚木」「空蝉」「夕顔」「若紫」 |
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浮世絵 源氏五十四帖
絵:三代豊国
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出版年 嘉永6年(1853)〜安政元年(1854) 版元 佐野喜 |
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浮世絵 源氏後集余情
絵:三代豊国
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出版年 安政4年(1857)〜文久1年(1861) 版元 魚魚 他 |
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