浮世絵 江戸の祭・風俗(江戸の華)
 
    

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むさしあぶみ 1
絵・作:浅井了意 出版年:万治4年(1661) 版元:中村五兵衛 

むさしあぶみ  1  2

 あぶみ(鐙)は馬具の一つで足を載せるもの。「むさし鐙」は武蔵で作られた鐙のことで、辞典には・・”くさり”を用いないで透かしを入れた鉄板にして先端に”さすが(刺鉄)”を付けて直接に鉸具(かこ)としたもの、とある。また、サトイモ科の多年草で関東以西の海岸に近い林内に自生する植物にこの名前が付けられたものがある。仏焔苞(ぶつえんほう)という”苞”の形が鐙に似ていることから名付けられたという。
 掲載した本の内容は”鐙”とも”サトイモ科の多年草”とも直接的な関係はない。明暦3年(1657)1月に発生した大火災(振袖火事ともいわれている)の内容を記したもの。火災で全てを失った男が出家して楽斎房と名乗り、故郷である京都北野天神に戻った時に旧友と出会って火災の顛末を語るというもの。物語風の記述でもあるので実録ではないが火災発生から4年後の万治4年(1661)に出版されたものであり、資料としての存在感も十分にある。挿絵の表現も臨場感が伝わり当時としては一級品と思う。
 火災の記録(物語)の題名を「むさしあぶみ」としたのは、掲載本の3ページ目で楽斎房が知人に問われて「かようなことは とはぬもつらし とふもうるさきむさしあぶみ」と言って話をはじめることから。何故、むさしあぶみがここで登場するかは、伊勢物語13段目の武蔵鐙に由来するが、これ以上の説明は長くなるので省略します。この時代の物語を読むには(ただし私はこの時代の仮名文字がまともに判読できないが)和歌や古典の知識がないと正確に理解することは難しいようです。


   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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