浮世絵 芝居・歌舞伎(役者絵) 
   
 
    

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役者絵

 上方で興った歌舞伎が江戸に入ったのは寛永1年(1624)に日本橋と京橋の中間の中橋に猿若勘三郎が中村座を開設したのが始まりとされる。以後歌舞伎は娯楽の少なかった江戸の地で人気を集め大衆芸能の頂点にまで発展する。 浮世絵の題材として欠かすことができないほど密接に関わってきた芝居・歌舞伎も当初は舞台全体を描く程度が主流で個々の役者を絵の中心とすることはなかった。元禄3年(1690)に大坂道頓堀で芝居の看板絵を描いて評判を得ていた鳥居清元が江戸に下って初めて市村座の看板を描く。その子清信は江戸歌舞伎の主流であった「荒事」と呼ばれる演技様式を巧に表現して芝居看板といえば鳥居派の絵師が独占的描く基礎を作る。ただし清信の描法は荒事芸を効果的に見せるために「瓢箪足、みみず描き」と呼ばれる象徴的で極端な表現で、写実的な絵ではなかった。
 歌舞伎の演目が単純のものから複雑なストリーに変化するに伴い浮世絵の役者絵も変化する。明和期(1764~)に入ると浮世絵も多色刷りが製作されるようになる。明和7年(1770)には一筆斎文調と勝川春章による多色刷りで役者の半身似顔絵「舞台扇」が出版される。各役者の顔面の特徴、演技仕草の癖を強調して描いた画期的な絵本として大評判となった。この時期は役者の個性を強調し且つ絵師の美意識によって美を表現する役者絵の性格を踏襲しつつ客観的な描写を重んじた勝川派の絵師が役者絵の主流として活躍する。
 寛政期(1789~)に入ると喜多川歌麿が描いた「大首絵」の美人画に触発され、勝川派のの絵師も役者顔面を強調した大首絵の役者絵を描くようになる。また同時期に東洲斎写楽が突如登場して後世の美術評論家から芸術性を認められ高い評価を得た大首絵の役者絵を残している。ただし写楽の活躍は10カ月ほどで、おそらく一部の愛好家の支持を得ただけにとどまったようだ。当時の大衆の好みは似顔絵であっても適度な粉飾が施された美しい役者絵にあったとおもわれる。
 歌川豊国は世相の好みに敏感に反応し、寛政期から文化、文政期にかけて美人画と役者絵を精力的に出版して浮世絵界に歌川派の確固たる基盤を作った。豊国およびその一門の絵師による浮世絵の製作が拡張するにつれて、多忙となった豊国は役者の似顔絵を描くための絵手本的な冊子「俳優楽室通」「此手嘉志和」「俳優三十二相点顔鏡」「役者相貌鏡」などの絵本を出版する。これにより豊国の門人は典型化した似顔絵を効率よく描いて役者絵のジャンルのなかで圧倒的な地位を得る。しかしながらこの様式化された役者絵は美術品というより工芸品的な性格を持っているともいえ、商品化されすぎた役者絵は歌舞伎の絢蘭とした美しさを保っていても個々の役者の人間的表現が薄れてしまう結果となった。この傾向は豊国の一番弟子であった国貞が三代豊国を継承して大御所として浮世絵界に君臨した江戸末期に更に顕著となる。この結末は美術画ではなく工芸品として、また芸術ではなく商品として美の技術を競い磨いた浮世絵の宿命ともいえる。
 しかしながら江戸時代の中期から末期までの二百年に及ぶ長期間、連綿として受け継がれ描き継がれた絵画はそのこと自体が文化であり、またそれを必要としたのは特別な層ではなく一般の庶民を含む広範な層であったことは世界の絵画事情と比べて特異なこと。役者絵は、その対象である歌舞伎と共に誇るべき日本の文化と思う。

 役者絵づくし
 絵:古山師重(古山太郎兵衛)
 作:
 出版年:元禄8年頃(1695頃)  版元:
 絵本 4巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
 

 風流四方屏風
 絵:鳥居清信
 作:
 出版年:元禄13年(1700)  版元:板木屋七郎兵衛
 絵本 2巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
 

 役者名物略姿
 絵:鳥居清倍・鳥居清満
 作:
 出版年:宝暦7年(1757)  版元:鱗形屋孫兵衛
 絵本 1巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
 

 きおひざくら
 絵:奥村政信
 作:
 
 出版年:  版元:
 画帖 1巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
  

 舞台扇
 絵:一筆斎文調・勝川春章
 作:
 出版年:明和7年(1770)  版元:雁金屋伊兵衛
 絵本 2巻 役者似顔絵を大規模に集成し彩色刷りで刊行した最初の画集とされている。 

 役者身振氷面鏡
 絵:勝川春章
 作:
 出版年:明和8年(1771)  版元:
 絵本 3巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
 

 三芝居役者絵
 絵:勝川春好
 作
: 
 出版年:安永元年(1772)  版元:
 自筆稿本 1冊 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です 

 続舞台扇
 絵:
 作:
 出版年:安永7年(1778)  版元:菊屋安兵衛
 明和7年刊の舞台扇3冊の内容を省略して2冊とし、役者の顔はそのままに役者の名を京大阪の役者名に変え、紋なども一部変更して刊行したもの。

 水也空
 絵:松屋耳鳥斎
 作: 
 出版年:安永9年(1780)  版元:八文字屋八左衛門
 絵本 1巻 上方役者を鳥羽絵で描く 

 翠釜亭戯画譜
 絵:翠釜亭邦高
 作:
 出版年:天明2年(1782)  版元:
 絵本 1巻 現存本ではなく希書複製会刊行の複製本です
 

 俳優楽室通
 絵:歌川豊国・国政
 作:式亭三馬 
 出版年:寛政11年(1799)  版元:上総屋忠助
 絵本 1巻
 

 俳優三十二相点顔鏡
 絵:歌川豊国
 作:東子樵客 
 出版年:享和2年(1802)  版元:蔦屋重三郎 他
 絵本 1巻

 役者相貌鏡
 絵:歌川豊国
 作:浅草市人 
 出版年:享和4年(1804)  版元:山田屋三四良
 絵本 1巻 

 三都俳優 万須可家美
 絵:松好斎半兵衛
 出版年:文化3年(1806)  版元:塩屋長兵衛
 絵本 1巻

 風流役者地顔五節句
 絵:歌川豊国
 出版年:  版元:
 浮世絵 役者の節句行事を5枚続きの浮世絵で描く

 豊国役者絵 役者十二つき
 絵:歌川豊国
 出版年:文化6年(1809)  版元:江崎屋吉兵衛
 浮世絵 役者の私生活を12月ごとに描いたもの。ただし4,6,7,9,10月は欠落。

 豊国役者絵 十二組のうち
 絵:歌川豊国
 出版年:  版元:山平
 浮世絵 三枚続き12組のシリーズのうち4組掲載。 

 団十郎舞台似顔絵
 絵:歌川豊国 
 出版年:  版元:
 浮世絵

 豊国の役者絵
 絵:歌川豊国 
 出版年:  版元:
 浮世絵
 

 国安の役者絵 
 絵:歌川国安
 出版年:  版元:
 浮世絵
 

 役者七小町
 絵:歌川国満
 出版年:寛政3年(1791)~文化1年(1804)
 版元:河重
 浮世絵 

 国貞の役者絵
 絵:歌川国貞 
 出版年:  版元:
 浮世絵

 役者似顔絵団扇画 
 絵:歌川国貞
 出版年:天保8年(1837)~天保9年(1838)  版元:
 浮世絵 全90枚 5分割で掲載。 

 国芳の役者絵
 絵:歌川国芳 
 出版年:  版元:
 浮世絵

 国芳の役者絵 切抜絵
 絵:歌川国芳 
 元祖プロマイド。贔屓の役者の絵を切り抜いて財布やお守りに入れて持ち歩いていたようです。 昭和の時代になって、浮世絵から写真に代わる。

 源氏雲浮世画合
 絵:歌川国芳
 出版年:天保14年(1843)~弘化4年(1847)
 浮世絵
 源氏物語を題材として役者絵を描く

 江戸錦今様国尽
 絵:歌川国芳
 出版年:嘉永5年(1852) 版元:ト山口 他 
 浮世絵
 各地の伝承・故事と役者絵を描く

 上方芝居絵
 絵:広貞
 出版年:江戸末期  版元:川音
 浮世絵 嘉永2年(1849)~安政2年(1855)の間に大阪で上演された芝居の浮世絵。

 俳家書画狂題
 絵:三代歌川豊国
 出版年:弘化4年(1847)~嘉永5年(1852)
 版元:中仁 
 浮世絵
 俳諧に役者絵を添える

 三代豊国 芝居絵1
 絵:三代歌川豊国
 出版年:弘化4年(1847)~嘉永5年(1852)
 版元:辻安
 浮世絵

 三代豊国 芝居絵2
 絵:三代歌川豊国
 出版年:弘化4年(1847)~万延1年(1860)
 版元:辻岡屋 他
 浮世絵

 歌舞妓十八番
 絵:三代歌川豊国
 出版年:嘉永5年(1852)  版元:ゑびすや
 浮世絵 七代目市川團十郎が天保年間(1830~1844)に定めた家宝ともされる歌舞伎の演目。

 五十路の駅
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:嘉永5年~6年(1852~1853)
 浮世絵 東海道の宿場風景を背景に役者絵を描く 

 役者見立東海道五十三駅
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:嘉永5年(1852)  版元:辻岡屋 他
 浮世絵 

 新版五十三次見立双六
 絵:三代歌川豊国
   二代歌川国貞 
 出版年:嘉永5年(1852)  版元:若狭屋与市
 双六 

 当盛六花撰・十花撰
 絵:三代歌川豊国 歌川広重 
 出版年:安政1年(1854) 版元:錦昇堂
 浮世絵 三代豊国が役者絵を、歌川広重が背景の花の絵を描く
 

 豊国漫画図絵
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:万延1年(1860)  版元:魚栄
 浮世絵 

 三代豊国 役者絵1
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:万延1年(1860)~文久3年(1863)
 版元:錦昇堂
 浮世絵 

 三代豊国 役者絵2
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:文久1年(1861)~文久2年(1862)
 版元:加賀屋 他
 浮世絵 

 三代豊国 役者絵3
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:安政2年(1855)~文久1年(1861)
 版元:ゑびすや 他
 浮世絵 
  

 三代豊国 役者絵4
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:万延1年(1860)~元治1年(1864)
 版元:文双 他
 浮世絵 
  

 江戸の花名勝会
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:文久2年(1862)~  版元:加藤清
 浮世絵
 

 当盛見立三十六花撰
 絵:三代歌川豊国 
 出版年:文久3年(1863)  版元:平野屋
 浮世絵 

 古今俳優似顔絵大全
 絵:三代歌川豊国  
 出版年:文久2年(1862)~文久3年(1863)
 浮世絵 版元:廣岡屋幸助

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