浮世絵 滑稽本 東海道中膝栗毛

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東海道中膝栗毛 
 滑稽本 8編18冊 絵師:十返舎一九   作者:十返舎一九  出版:享和2年(1802) 版元: 

 東海道中膝栗毛は江戸の戯作者十返舎一九の代表作であり、今日もなお読み続けられているベストセラ−小説。一般的には”東海道中膝栗毛”と称されているが、外題、内題、序文などには”道中膝栗毛””浮世道中膝栗毛”などいろいろある。当初は”道中膝栗毛”が題であったと思われますが、続膝栗毛、続々膝栗毛が刊行されるにおよんで、最初に刊行された八編を他と区別するために”東海道中”としたのかもしれません。最初の八編にしても五編の伊勢までの道中は予定していたらしいが、その後は書籍の売れゆきが好調なことから急遽継ぎ足したものらしい。因みに”膝栗毛”は人間の足(膝)を馬(栗毛)に例えたもので「道中膝栗毛」は徒歩旅行のこと。また乗り物(駕籠・馬)に乗ることができず徒歩でしか行けない貧乏旅行の意でもあるという。
 東海道中膝栗毛の特徴は、名所案内にとどまらず旅人の体験談がストリーの中心に据えられていること。なかでも十返舎一九が創りだした登場人物である弥次さんこと”弥次郎兵衛”と北八こと”喜多八”の滑稽道中は現在でも「弥次北(喜多)道中」と呼称されて、仲の良い男の二人旅の代名詞にもなっている。一九はこの二人の登場人物を狂言でいう太郎冠者と次郎冠者に見立て、悪戯者で小悪人、食い気と色気、金銭に対する欲望を臆面もなく発揮するいささか品格に欠けた人物に仕上げている。弥次さん北さんは物語の始めでは“江戸っ子”と思われていたが、八編を書き終えた後に刊行された「発端」によれば駿河の生れとなっている。これは作者である一九と同じである。弥次北の振る舞いは気風の良い”江戸っ子”には似つかわしくはないという読者の苦情(?)から後から道中の「発端」を書き、登場人物の素性を明らかにせざるを得なかったのかもしれない。
 道中膝栗毛は享和2年(1802)に初編が出版され、八編が出版されたのは文化6年(1809)。「発端」は文化11年(1814)に出版されている。ヒット作品であったので初版の板木は摩耗し、江戸時代を通じて再板版が多数出版されている。このサイトに掲載した本は発端が刊行された文化11年(1814)以降に再版されたものと思われます。板木がかなり摩耗しており文字がかすんでいたり、また蔵書家のその後の扱いに不備があったのか文面がにじんでいたりして判読できないページも多々あります。明治43年に刊行された活字本も併せて掲載しましたので、興味のある方は”新本”のロゴをクリックしてください。なお、活字版が底本としたものはこのサイトに掲載した本より早い版(おそらく初版本)と思われ、掲載本にはない序文の一部が記載されています。挿絵は口絵の一部を除いて十返舎一九が自ら描いたものです。
 別に一九自筆の画帖を掲載しています。日本橋から京までの各宿場毎に一枚の絵を描いている。本文の挿絵と類似的な絵もありますが、基本的には全て新たに描いたもの。一九が大阪滞在中に会得したとされる鳥羽絵の影響が色濃く出ている。また各絵には一九オリジナルの句も記載されている。掲載の画帖は現存品の写しでなく、昭和8、9年に稀書複製会によって出版された複製品(国立国会図書館デジタル資料)を写したものです。現存品は極めて少なく(一、二点か?)、これは一般に販売されたものでなく道中膝栗毛の完成を祝って(発端を出版した後の文化12年・1815頃か)一九が知人に配布したものと推測されている。なお、由井宿のあとの二宿(江尻、興津)が欠落しています。
 

 発 端   八編を書き終えた後から出版されたもので、旅を始める動機、登場人物の素性を書いている。 

 初 編   江戸〜箱根 

 二編 上   箱根〜蒲原 

 二編 下   蒲原〜岡部 

 三編 上   岡部〜日坂 

 三編 下    日坂〜新居 

 四編 上   新居〜赤坂 

 四編 下   赤坂〜桑名 

 五編 上   桑名〜追分 

 五編 下   追分〜山田 

 五編追加   伊勢めぐり 

 六編 上   伏見〜京 

 六編 下   京内めぐり 一 

 七編 上   京内めぐり 二 

 七編 下   京内めぐり 三 

 八編 上   大阪見物 一 

 八編 中   大坂見物 二 

 八編 下   生玉〜住吉 


 東海道中膝栗毛画帖   画帖が出版されたのは発端が出版された後の文化12年(1815)頃と推測されます。また、一般に販売されたものでなく、一九が道中膝栗毛の完成を祝って知人に配布したものとも推測されている。各宿場ごとに一枚の絵を描いていますが江尻、興津の二宿が欠落している。


 浮世道中膝栗毛滑稽双六   出版年 安政2年(1855)  版元 恵比寿屋庄七
 東海道中膝栗毛を題材とした双六。絵は広重が描く。 

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