貞享元年(1684)、西鶴の2作目となる”好色二代男”のサブタイトルがある諸艶大鑑(しょえんおおかがみ)は一代男と違って最初から正式な版元・大坂呉服町の池田屋から出版している。一代男は俳壇の跡目を継ぐ可能性があったことから出版を躊躇した西鶴も、この時点ではその可能性がなくなり、また一代男が予想外の好評であった事もあり開き直っての出版である。版元は一作目の人気に便乗し、二匹目のどじょうを狙って二代男のサブタイトルを付けさせたものと思われる。また、二代男の主人公”世伝”は一代男の巻2で世之介が15歳の時にさる後家に産ませた子で、その子は六角堂の門前に捨てられたのをある富豪が拾って育てたことにしている。本書の挿絵も一作目同様に西鶴自身が描いたとされる。
諸艶大鑑(好色二代男)の内容は、主人公”世伝”が京都の遊里・島原の出口の茶屋で、諸国の遊里を渡り歩いたやりて婆から聞き書きした諸国の遊女の話を集めた説話集となっている。一作目の一代男では遊里を粋と美意識だけで描いたが、二作目では遊女の話を通して、金なくしては粋も美も、笑いも涙もない現実として描いている。世之介があくなき可能性を求めて女護の島へ向かって船出するのに対して、世伝は遊里の世界のむなしさを伝えている。 |