万の文反古(よろずのふみほうぐ)は元禄3、4年頃に執筆されたとされる書簡体の短編小説集。刊行されたのは西鶴の死後、第4遺稿集として元禄9年(1696)正月。表紙のタイトルは”西鶴文反古”となっている。また、”世話文章”の付けたしもある。なお掲載本は再版本で正徳2年(1712)、大坂・池田屋三良右衛門から出版されたものです。
この短編小説に描かれているのは「日本永代蔵」で取り上げた大商人の成功談ではなく、みじめな中・下層商人である。”銀(かね)が銀(かね)を儲ける世の中”で、資本を持たない中流以下の商人の苦しい生活に西鶴が同情した結果の執筆と考えられる。それ故、版元が出版をためらっていたことが窺える。 |