封建社会、儒教精神が支配する社会状況の中で、西鶴の処女作「好色一代男」は一人のアンチヒーローの物語であったが、これは二十人のアンチヒーロー(親不孝)の物語である。「本朝二十不孝」が出版された時の将軍は綱吉で、忠孝を奨励し、孝子の表彰に努めたとされる。このような時代に親不孝を題名とする本を出版することで咎めはなかったかと心配するが、本の内容は因果応報物語であり、逆説的ながら”孝”を説く内容。ただし西鶴は親への孝は金銭で得られるとも説く。金銭を得る為には偶然や奇跡に頼るのではなく、日常のたゆまぬ努力だと諭す。商人の身分を士農工商の最下層に区分し、商業活動を規制する幕府の諸政策を批判した書とも言われている。
出版年については序文が貞享4年((1687)、刊記が貞享3年(1686)となっている。全5巻。挿絵の絵師は不詳。
各巻の目録に描かれたカットは、その内容の特徴を描いたもので、当時の出版界にあっては画期的な表現方法。この手法は、この後に出版される「日本永代蔵」の目録のカット”のれん”に続く。 |