室町時代後半から江戸時代前期にかけてお伽草紙などを題材として作られた絵入り彩色写本(冊子、巻物)を奈良絵本と称している。この名称は明治期以後の研究者やコレクターによって使用されてきたもので名前の由来ははっきりしてはいないようだ。描かれている絵は胡粉、朱、緑青、金銀箔等を用いて着色した極めて絢麗なもの。奈良興福寺などの絵仏師が描く明るい彩色の素朴な絵の雰囲気があることからこの名前がついたとの説もあるが、現存する奈良絵本の製作地と奈良の地名とは直接的な関係はないようだ。
奈良絵本は全て写本によるもので木版画によるものはない。しかし彩色された絵の華麗さは墨絵や手彩色の浮世絵が多色刷りの錦絵に進化してゆく切っ掛けの一つであったとも思われる。このページに掲載した奈良絵本は全て江戸前期に写本されたものと推測されます。 |